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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)9405号 判決

原告 林茂一郎

右訴訟代理人弁護士 上坂明

同 舩冨光治

被告 東大阪市

右代表者市長 清水行雄

右訴訟代理人弁護士 宮下靖男

主文

一  被告は、原告に対し、金三一五万円及びこれに対する昭和六二年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一七一三万九〇三五円及びこれに対する昭和六二年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

原告は、昭和五五年一一月二六日午後七時二〇分頃、大阪府東大阪市東山二番二一号先の市道(以下「本件道路」という。)の西側端を自転車で南から北に進行中、本件道路の下を北西から南東に横断している水路(以下「水路」という。)に転落し(転落場所を以下「本件事故現場」という。)、受傷した(以下「本件事故」という。)。

2  被告の責任

(一) 本件道路の瑕疵

(1) 本件道路は、南北方向に走る幅員約六メートルの道路であるが、別紙図面のとおり、本件事故現場付近では、水路(幅約二ないし三メートル)の上に架かる小橋(以下「小橋」という。)となっており、その小橋の南詰において、幅員が約五メートルと、その西側部分が約一メートル急に狭くなっている。

(2) このような形状の道路において、自転車で通行する者が、とりわけ夜間、道路の右形状に気づかず、あるいは気づくのに遅れ、道路の西側端寄りを直進すると、誤って水路に転落する危険がある。

(3) したがって、道路の設置管理者は、このような危険を防止するために、①幅員が狭くなっている小橋の手前にそれを示す標識を、②幅員が狭くなっている箇所に転落を防止する欄干を、③幅員が狭くなっている付近にその状況を照らすに足りる照明を、それぞれ設置するなどの管理措置を講じなければならない。

(4) しかるに、本件道路には、本件事故当時、右①ないし③のいずれの設備も設置されておらず、本件道路は、道路が通常有すべき安全性に欠けていたから、本件道路の設置・管理には瑕疵があったというべきである。

(二) 因果関係

原告は、前記日時に、本件道路の西側端を徐行しながら南から北に向かって自転車で進行していたところ、本件道路の前記瑕疵のため、水路に転落することを予測しえず、水路に転落して本件事故に至ったものであるから、本件事故と本件道路の前記瑕疵との間には、因果関係がある。

なお、原告は、水路の直前において、対向車のライトが目に入り、前方が全く見えない状態になったため急制動措置をとったが間にあわずに水路に転落したものであるが、かような事態に際しても、本件道路に前記瑕疵がなければ、本件事故は避けられたはずである。

(三) 本件道路は、一般交通の用に供されている公の営造物であり、被告の管理にかかるものである。

(四) したがって、被告は、国家賠償法二条一項に基づき、本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

3  損害

(一) 受傷、治療経過等

(1) 受傷

原告は、本件事故により、頭部外傷第一型、腰椎捻挫、頸椎捻挫、右上顎骨々折、右下顎骨々折、右顔面熱性膿瘍外傷性(右眼周辺)三叉神経痛、外傷性大後頭神経痛の傷害を受けた。

(2) 治療経過

原告は、右受傷により、昭和五五年一一月二六日から同年一二月二三日まで(二八日間)、同五六年三月五日から同月二二日まで(一八日間)、同五八年一〇月三日から同月一一日まで(九日間)、同六〇年一〇月二日から同月六日まで(五日間)森外科病院に入院し(合計六〇日間)、同五五年一二月二四日から同六〇年一一月三〇日まで(但し、右入院期間を除く。)同病院に通院し(実通院日数一四一八日間)、治療を受けた。

(3) 後遺症

原告は、本件事故による前記受傷により後遺症を残し、昭和六〇年一二月一日症状固定の診断を受け、後遺症等級第七級に認定されている。

(二) 治療関係費 九五三万六九一八円

(1) 治療費 九四七万六九一八円

原告は、昭和五五年一一月二六日から同六〇年一一月三〇日までの治療費として九四七万六九一八円を要した。

(2) 入院雑費 六万〇〇〇〇円

原告は、前記六〇日間の入院期間中、一日当たり一〇〇〇円、合計六万円の入院雑費を要した。

(三) 逸失利益 一六六五万四一六四円

(1) 休業損害 九四四万四〇九六円

原告は、本件事故当時、一日当たり五一五七円八九銭の平均賃金を得ていたところ、本件事故により、本件事故の翌日の昭和五五年一一月二七日から症状固定日の同六〇年一二月一日までの一八三一日間、休業を余儀なくされた。このため、原告は、九四四万四〇九六円(円未満切捨て。以下同じ。)の得べかりし収入を喪失した。

(2) 将来の逸失利益 七二一万〇〇六八円

原告は、本件事故のため退職を余儀なくされ、現在無職であるので、原告の年収を昭和六〇年賃金センサス(第一巻第一表・産業計・企業規模計・労歴計の男子労働者の年令階級別平均給与額)により計算すると、二九五万〇一〇〇円となり(原告は、症状固定時満六五歳)、就労可能年数五年、労働能力喪失率一〇〇分の五六として、ホフマン式計算法により逸失利益を算定すると、七二一万〇〇六八円となる。

2,950,100円×0.56×4.3643=7,210,068円

(四) 慰謝料 九二九万八〇〇〇円

(1) 入・通院慰謝料 三〇九万八〇〇〇円

(2) 後遺症慰謝料 六二〇万〇〇〇〇円

(五) 弁護士費用 四〇万〇〇〇〇円

(六) 以上損害額合計 三五八八万九〇八二円

4  損害の填補 一八七五万〇〇四七円

(一) 治療費に対して 九四七万六九一八円

原告は、昭和五五年一一月二六日から同六〇年一一月三〇日までの治療費について、労災保険より療養補償給付として九四七万六九一八円の支給を受けた。

(二) 休業損害に対して 五六五万二五三八円

原告は、昭和五五年一一月二七日から同六〇年一一月三〇日までの休業損害について、労災保険より休業補償給付として五六五万二五三八円の支給を受けた。

(三) 逸失利益に対して 三六二万〇五九一円

原告は、労災保険より障害補償年金として本件口頭弁論終結時である平成二年七月一一日までに三六二万〇五九一円の支給を受けた。

5  よって、原告は、被告に対し、国家賠償法二条一項に基づく損害賠償請求として一七一三万九〇三五円(3の損害合計額から4の填補額を控除した残額)及びこれに対する本件事故後の昭和六二年一〇月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1(事故の発生)の事実のうち、原告主張の本件事故現場が原告主張の市道であることは認めるが、その余は不知。

2  同2(被告の責任)について

(一) 同(一)(本件道路の瑕疵)の事実のうち、本件道路は南北に走る道路で、原告主張の水路上に架かる小橋の南詰において西側部分が狭くなっていること及び本件事故当時、原告主張のような標識や欄干が設置されていなかったことは認め、その余は否認し、本件道路の設置・管理に瑕疵があった旨の主張は争う。

本件道路は、古くこの付近が農村地帯にあった当時から存在する道路であって、道路の幅員も広狭一定でなく、現在はいわゆる生活道路である。本件道路の幅員が広狭一定していないことは、付近に居住している者なら熟知しており、また、この付近に住居していない者であっても通行に際し十分に認識できた。本件道路の交通量も幹線道路のように多くはなく、車両が高速で通行する状況でもないうえ、本件事故現場付近の見通しはよかった。したがって、本件事故現場を通行する者が誤って水路に転落する危険は極めて少なかった。

小橋の北詰東側には街灯があり、その照明によって夜間でも本件事故現場付近の道路状況は十分認識できた。

したがって、本件道路の設置・管理に瑕疵はなく、このことは、本件道路を極めて多数の者が継続して昼夜を分かたず通行しているにもかかわらず、本件事故現場で本件以外に本件同様の事故が発生していないことからも明らかである。

(二) 同(二)(因果関係)の事実は否認する。

仮に、本件事故が発生したとしても、原告は、本件事故現場の極く近くに居住しており、本件道路を原告の居住区域内の道路として日常通行し、本件事故現場付近の状況を熟知していた者であるから、本件事故は、原告の前方不注視による一方的過失によって惹起されたものというべきであり、仮に、本件道路の設置・管理に瑕疵があったとしても、本件事故と右瑕疵との間に因果関係はないというべきである。

また、原告主張のように、原告が、水路の直前において、対向車のライトが目に入り、前方が全く見えない状態になっていたとすると、原告は、周囲の状況に対応した行動がとれなくなっていたことになるから、本件事故は、本件道路の設置・管理の瑕疵の有無にかかわらず起こっていたことになるが、右状況は、原告に特有な主観的事情に過ぎないから、本件事故と右瑕疵との間には因果関係はないというべきである。

(三) 同(三)の事実は認める。

(四) 同(四)の主張は争う。

3  同3(損害)について

(一) 同(一)(受傷、治療経過等)の事実は不知。

(二) 同(二)(治療関係費)の事実は不知。

(三) 同(三)(逸失利益)について

(1) 同(1)(休業損害)の事実のうち、原告が本件事故当時、一日当たり五一五七円八九銭の平均賃金を得ていたことは認め、その余は不知。

(2) 同(2)(将来の逸失利益)の事実は否認する。

原告は、本件事故当時、守衛ないし保安係として関西システム管理株式会社に勤務し、平均賃金として一日五一五七円八九銭を得ていたのであるから、逸失利益の計算の基礎は、この現実の賃金によるべきである。

(四) 同(四)(慰謝料)について

(1) 同(1)(入・通院慰謝料)は争う。

仮に、被告の責任が認められるとしても、入・通院慰謝料は、原告の入・通院日数から考えると、八〇万円程度が相当である。

(2) 同(2)(後遺症慰謝料)は争う。

仮に、被告の責任が認められるとしても、原告の後遺症慰謝料としては、三五〇万円程度が相当である。

4  同4(損害の填補)の事実はいずれも認める。

三  抗弁

1  過失相殺

(一) 仮に、被告に本件事故の責任があるとしても、原告は、本件事故現場付近の状況を熟知していたうえ、本件道路は見通しもよく、本件事故現場付近の照明も十分であったから、本件事故の原因は、原告の前方不注視の過失に起因するところが大であったというべきであって、損害賠償額の算定にあたっては、十分な過失相殺がなされるべきである。

(二) そして、右過失相殺をする場合、全損害額から労災保険給付を控除した後の残損害額について過失相殺をすべきではなく、全損害額について過失相殺をした後に右給付を控除すべきである。

2  消滅時効

(一) 原告は、本件事故が発生したとされる昭和五五年一一月二六日に、本件事故による前記損害及び本件事故が被告の管理する本件道路の設置・管理の瑕疵により発生したことを知っていたから、本訴請求の損害賠償請求権は、本件事故の三年後である同五八年一一月二六日の経過により、時効消滅した。

仮に、原告が、本件事故直後には前記後遺症に基づく損害を予見しえなかったとしても、遅くとも本件事故による傷害について診断書の作成された昭和五七年三月六日には前記後遺症に基づく損害を予見しえたから、三年後の同六〇年三月六日の経過により、前記後遺症に基づく損害賠償請求権も時効消滅した。

(二) 被告は、右時効を援用する。

3  損害の填補

原告は、本件事故による損害の填補として、請求原因4(損害の填補)記載のものの他、左の支給を受けた。

(一) 休業損害に対して 一八八万三六三七円

原告は、労災保険より休業特別支給金として一八八万三六三七円の支給を受けた。

(二) 逸失利益に対して 一五九万〇〇〇〇円

原告は、労災保険より障害特別支給金として一五九万円の支給を受けた。

したがって、右支給額合計三四七万三六三七円を損害額から控除すべきである。

四  抗弁に対する答弁

1  抗弁1(過失相殺)の事実は否認し、主張は争う。

(一) 原告の住居は、本件事故現場から約一・五キロメートルないし二キロメートル離れたところにあり、原告は、本件道路を通って職場に通っていた者であるが、勤務先を変わってからほとんど日が経っておらず、本件事故の際、本件事故現場付近の状況を十分認識していなかった。また、本件事故現場付近の照明は、不十分であった。

(二) 仮に、過失相殺がなされるとしても、全損害額から労災保険給付を控除した後の残損害額について過失相殺がなされるべきであって、全損害額について過失相殺がなされた後に右給付を控除すべきではない。

(三) また仮に、全損害額について過失相殺がなされた後に労災保険給付を控除すべきとしても、原告が被った損害のうち、財産的損害中の積極損害である入院雑費及び精神的損害である各種慰謝料から右給付を控除することは許されない。

2  同2(消滅時効)(一)の事実は否認し、主張は争う。

後遺症についての損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、症状固定日とみるべきところ、前記後遺症の症状固定日は昭和六〇年一二月一日、本訴提起は同六二年一〇月一日であるから、前記後遺症についての損害賠償請求権は、時効消滅していない。

入院雑費及び入・通院慰謝料は、それぞれの入院、通院時において、それぞれの損害が現実化し、原告がそれぞれの損害を知ったとみるべきところ、原告は、昭和六二年六月五日、被告を相手方として本件事故についての損害賠償請求についての調停を裁判所に申し立てているから、それより三年前である同五九年六月五日以降に発生した入院雑費及び入・通院慰謝料は、時効消滅していない。

3  同3(損害の填補)の事実は認めるが、損害額から被告主張の各支給金を控除すべき旨の被告の主張は争う。

休業特別支給金及び障害特別支給金は、本件事故に起因する損害を填補するために労災保険より保険給付として支給されたものではなく、労災保険より労働福祉事業の一環として支給されたものであるから、損害額から控除すべきではない。

五  再抗弁(消滅時効の援用権の喪失)

1  原告は、息子である訴外林省司を介して、本件事故直後の昭和五五年末頃から、被告に対し、本件事故に基づく損害賠償の請求を継続的にしてきた。

2  その間、被告は、訴外清水課長補佐、同原田主事らを担当者として原告との交渉に当たらせてきたが、消滅時効完成後の同六一年五月一〇日、右清水を介して原告に対し、右損害賠償義務のあることを認め、書面により、少なくとも一〇八万九二〇〇円については支払う用意があることを伝えてきた。

3  原告は、被告との本件事故に関する損害賠償請求の交渉が、右のごとき経過をたどっていたため、安心して、訴訟等の時効中断の手続を採らなかったのである。

4  したがって、被告の消滅時効の援用は、信義則に反し権利の濫用であるから、許されない。

六  再抗弁に対する答弁

再抗弁(消滅時効の援用権の喪失)の事実のうち、原被告間において本件事故の損害について交渉があったことは認めるが、その余は否認し、主張は争う。

第三証拠《省略》

理由

一  本件事故の発生

請求原因一1(事故の発生)の事実のうち、原告主張の本件事故現場が大阪府東大阪市東山二番二一号先の市道であることは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によると、同項のその余の事実が認められる。

二  被告の責任

1  本件事故現場の状況

《証拠省略》を総合すると、次の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件事故当時、本件道路の本件事故現場付近の状況は、別紙図面のとおりであった。すなわち、本件道路は南北に通じる道路で、水路(幅約二ないし三メートル)の上はこれに架かる小橋となっている(この点は、当事者間に争いがない。)。本件道路の幅員は、小橋の南方及び北方においては約五メートルであるが、小橋上は西側部分においては約八〇センチメートル急に狭くなっている。したがって、本件道路は、小橋部分において、西側寄りの約八〇センチメートル幅部分が欠落したような形状となっており、小橋の南方から北方に向けて西側端寄りの約八〇センチメートル幅部分を直進通行するときには、本件道路(小橋)から外れてその西側の水路に突き当たることになる(以下、右突き当たり部分、すなわち本件道路の、小橋の南西詰から西の、水路に接する狭くなっている部分を、「本件狭窄部分」という。)。水路は、本件道路面からの深さ約一・八メートルで、その両壁はほぼ垂直の石垣造となっている。また、水路の上には、小橋の西側沿いにこれと並行し、本件道路面とほぼ同じ高さの位置に、直径二〇センチメートルと一五センチメートルの二本のガス管が敷設されている。

(二)  本件道路は、市街地を通る、ほぼ直線の見通しのよい平坦な道路であり、路面は小橋部分を含めて同一色のアスファルトで舗装されており、自動車、自動二輪車は南方向への一方通行となっている。本件事故当時、本件道路を南から北へ通行する者に対して本件狭窄部分の発見を妨げるような障害物はなかった。

(三)  本件事故当時、本件事故現場付近には、本件狭窄部分から約八メートル北東の本件道路東側端に立てられた電柱に、付近住民の自治会が防犯灯として設置した一八ワットの蛍光灯があったが、それ以外に道路照明設備はなかった。また、本件道路沿いには民家が並んでいたが、道路側に窓の無い家がほとんどで、夜間民家の灯火が本件事故現場付近の道路を照らす状況にはなかった。

(四)  本件事故当時、本件道路には、本件狭窄部分から水路への転落を防止するための欄干等の設備はなく、本件狭窄部分あるいは水路の存在を示す標識も設置されていなかった(この点は当事者間に争いがない)。

(五)  本件事故当時は、既に陽は沈み、月も出ていなかった。

2  本件事故発生の経緯

《証拠省略》によると、原告は、本件事故当日の午後七時二〇分頃、自転車を運転し、大人の早足程度の速度で本件道路の西側端寄り約八〇センチメートルの範囲内を南から北に向けて走行し、本件狭窄部分があることに気づかないまま同所にさしかかったが、水路の手前約一ないし二メートルの地点で対向して来た自動車のライトに一瞬気を奪われ、水路の存在に気づかないままこれに自転車もろとも転落したこと及び当時原告は、右自転車に装備されていた前照灯に不備があったので、右手に懐中電灯を持って前方を照らしながら走行していたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

3  以上認定の事実に照らして、本件道路の設置・管理の瑕疵について検討する。

(一)  本件道路には本件狭窄部分があり、その北側は水路となっていたから、本件道路を自転車を運転して南から北に通行する者は、道路西側寄りの約八〇センチメートル幅部分内を通行するときには本件狭窄部分に突き当たることになるから、その道路状況を認識していない場合には、本件狭窄部分から路外に逸脱して水路に転落する危険があった。そして、本件道路は、道路交通法(一八条一項)上、自転車運転者に道路の左側端に寄って通行することが義務づけられている道路であるから、これに従って通行すればするほど右の危険は高まる状況にあった。

したがって、殊に見通しが悪くなる夜間において、本件道路通行者に対する安全性を確保するためには、通行者に対して本件狭窄部分の手前でその存在を認識させ、水路への転落を防止するための設備、例えば、本件狭窄部分を十分に照らしうる照明設備、または本件狭窄部分の手前にその道路の形状ないし水路の存在を示す標識、もしくは本件狭窄部分及び小橋に水路への転落を防止する欄干等を設置することが必要であったというべきである。

しかるに、本件事故当時、本件道路には右水路への転落を防止する欄干も危険を示す標識等も設置されておらず、また、本件道路の照明設備も防犯灯としての一八ワットの蛍光灯が一つという極めて不十分なものであった。

したがって、本件事故当時、本件道路は通常有すべき安全性を欠いていたものであって、本件道路の管理には瑕疵があったものといわなければならない。しかし、右のような設備を設置することにより本件道路が通常有すべき安全性は確保できるのであるから、本件道路の設置自体には瑕疵があったとはいえない。

(二)  確かに、本件道路は見通しのよい直線道路であり、本件事故当時本件狭窄部分の発見を妨げるような障害物も存在しなかったから、原告が光量の十分な前照灯を装備し、前方を注視して進行しておれば、本件狭窄部分の道路状況をその手前で確認し、水路への転落を回避する措置をとりえたことは後記認定のとおりである。

しかしながら、自転車運転者が、通常、常に光量の十分な前照灯を装備しているとは限らず、また、対向車の接近等により、進路前方のみを注視して走行しえない事態も起こりうるから、転落事故を回避しえたからといって、本件道路の管理に瑕疵がなかったとはいい難い。

なお、被告は、本件道路を極めて多数の者が継続して昼夜を分かたず通行しているにもかかわらず、本件事故現場で本件と同様の事故が発生していなかったことからも、本件道路の設置・管理に瑕疵がないことは明らかである旨主張するが、仮に本件事故と同様の事故が発生していなかったとしても、右一事をもって、本件道路の管理に瑕疵がなかったとはいい難い。

4  本件道路の管理の瑕疵と本件事故との因果関係

原告は、前記2認定の経緯で、本件狭窄部分の存在に気づかずに進行して水路に転落し、本件事故に至ったものである。

したがって、本件事故当時、もし仮に、本件事故現場の手前に危険を表示する標識等が設置されているか、本件狭窄部分を照らす十分な照明設備が設置されているかしておれば、原告は、本件狭窄部分をその手前で発見し、本件事故を避けえたこと、しからずとしても、転落を防止する欄干が設置されておれば、原告は転落事故を避けえたことが容易に推認できるから、本件道路の管理の前記瑕疵と本件事故との間に因果関係が存することは明らかである。

なお、被告は、原告は本件事故現場付近の状況を熟知していたから、本件事故は原告の前方不注視による一方的過失によって惹起されたものであって、本件事故と本件道路の設置・管理の瑕疵との間には因果関係がない旨主張するが、《証拠省略》によると、原告は、本件事故現場付近に居住していた者でもなく、本件道路は本件事故当時までに通勤のために四、五回通行したことがあっただけであり、本件事故現場の状況には不案内であったことが認められるから、被告の右主張は採用できない。

5  本件道路が、一般交通の用に供されている公の営造物であり、被告の管理にかかるものであることは、当事者間に争いがない。

6  したがって、被告は、国家賠償法二条一項に基づき、本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  受傷、治療経過等

《証拠省略》によると、請求原因3(損害)(一)(受傷、治療経過等)(1)(受傷)、(2)(治療経過)の事実及び原告は、後遺症として外傷性三叉神経痛、外傷性大後頭神経痛、右眼失明、顔面瘢痕(長さ五センチメートルと二センチメートル)等を残し、右症状は昭和六〇年一二月一日固定し、これにつき労働災害身体障害等級七級二〇号(八級一号、九級七―二号、一二級一三号の併合)の認定を受けたことが認められる。

2  治療関係費 九五三万六九一八円

(一)  治療費 九四七万六九一八円

《証拠省略》によると、請求原因3(損害)(二)(治療関係費)(1)(治療費)の事実が認められる。

(二)  入院雑費 六万〇〇〇〇円

原告が、本件事故により合計六〇日間入院したことは前記認定のとおりであり、右入院期間中入院雑費として一日当たり一〇〇〇円の割合による合計六万円の入院雑費を要したことは、経験則上これを認めることができる。

3  逸失利益 一四八五万六三一〇円

(一)  休業損害 九四四万四〇九六円

《証拠省略》によると、原告は、本件事故当時訴外関西システム管理株式会社に勤務し、一日当たり五一五七円八九銭の平均賃金を得ていたが、本件事故により、その翌日である昭和五五年一一月二七日から症状固定日である同六〇年一二月一日までの一八三一日間休業を余儀なくされ、その間合計九四四万四〇九六円(円未満切捨て、以下同じ。)の収入を失ったことが認められる。

(二)  将来の逸失利益 五四一万二二一四円

原告が、本件事故当時、一日当たり五一五七円八九銭の平均賃金を得ていたことは前記認定のとおりであり、《証拠省略》によると、原告は前記の症状固定時満六五歳一〇か月であったことが認められ、右各事実並びに前記認定の受傷及び後遺障害の部位、程度によると、原告は前記後遺障害のため、昭和六〇年一二月二日から労働能力を五六パーセント喪失したものと認められるところ、その就労可能年数は昭和六〇年一二月二日から六年間程度と考えられるから、原告の将来の逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、五四一万二二一四円となる。

5,157.89円×365日×0.56×5.1336=5,412,214円

なお、原告は、賃金センサスによる平均給与額を基準に将来の逸失利益を算定すべきである旨主張しているが、本件においては本件事故当時の原告の現実の収入額の認定が可能であり、それは賃金センサスによる平均給与額を下回っているものと認められるところ、原告の年齢、職業等からみて、原告において将来、右現実に得ていた収入額を超えて、賃金センサスによる平均給与額以上の収入を得られる蓋然性があるとは認め難いから、原告の右主張は採用できない。

4  慰謝料 九五〇万〇〇〇〇円

前記認定の本件事故の態様、原告の受傷の部位・程度、その治療の経過、原告の後遺症の内容等諸般の事情を総合考慮すると、本件事故により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては、九五〇万円(入・通院慰謝料一九〇万円、後遺症慰謝料七六〇万円)が相当と認められる。

5  以上の損害額合計 三三八九万三二二八円

四  過失相殺

1  本件事故当時の本件道路の状況は前記認定のとおりであるが、本件のように夜間自転車で道路を通行する者は、前照灯で進路の前方を照らし、進路の安全を十分確認しながら進行すべき注意義務があったというべきである。そして、検証の結果に照らすと、本件道路は、夜間においても、右注意義務を尽くせば水路の少なくとも五メートル位手前の地点では本件狭窄部分の存在を認識できる状況にあったものと認められるところ、前記認定の原告の走行速度(大人の早足程度)であれば、その制動装置に不備がない限り原告が本件狭窄部分の手前で停止し(本件事故当時、原告運転の自転車の制動装置に不備があったことを窺わせる証拠はない。)、あるいは、本件狭窄部分を避けて走行することにより、水路への転落を回避することは十分可能であったというべきである。

しかるに、原告は、前記認定のとおり、本件狭窄部分があることに全く気づかないまま水路に転落したものである。

そうすると、原告が水路の約一ないし二メートル手前で対向車のライトに気を奪われたことを考慮しても、本件事故については、原告にも前記の注意義務を怠った過失があったものといわざるをえない。

そして、原告の右過失の態様、本件道路管理の前記瑕疵の内容等諸般の事情を考慮すると、過失相殺として、原告に生じた損害の七割を減ずるのが相当と認められる。

2  そうすると、原告の損害は次のとおりとなる。

(一)  治療関係費 二八六万一〇七五円

(1) 治療費 二八四万三〇七五円

(2) 入院雑費 一万八〇〇〇円

(二)  逸失利益 四四五万六八九二円

(1) 休業損害 二八三万三二二八円

(2) 将来の逸失利益 一六二万三六六四円

(三)  慰謝料 二八五万〇〇〇〇円

(1) 入・通院慰謝料 五七万〇〇〇〇円

(2) 後遺症慰謝料 二二八万〇〇〇〇円

3  なお、原告は、前記損害額から後記各給付を控除した後の残損害額について過失相殺すべき旨主張するが、労働者災害補償保険法一二条の四は、受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府の労災保険給付義務とが相互補完の関係にあり、同一の事由による損害の二重填補を認めるものではない趣旨を明らかにしているのであって、政府が労災保険給付をしたときは、右保険給付の原因となった事由と同一の事由については、受給権者が第三者に対して取得した損害賠償請求権は、右給付の価額の限度において国に移転する結果減縮すると解されるところ、損害賠償額を定めるにつき過失相殺すべき場合には、受給権者は第三者に対し過失相殺して定められた額の損害賠償請求権を有するに過ぎず、同条一項により国に移転するとされる損害賠償請求権は過失相殺した後のそれを意味するものと解される。したがって、まず損害額から過失相殺し、その後に労災保険給付の価額を控除するのが相当である(最高裁昭和六三年(オ)第四六二号平成元年四月一一日第三小法廷判決・民集四三巻四号二〇九頁参照)。

そこで、前記損害額について過失相殺した後に前記各給付を控除することとした。

五  損害の填補

1  労災保険給付

(一)  請求原因4(損害の填補)の事実は、当事者間に争いがない。

(二)  そこで、右各給付を前記損害から控除すべきかどうかについて検討する。

労災保険の給付対象となる事故が発生し、受給権者が政府から労災保険給付の支給を受けたときは、前記のとおり、受給権者が第三者に対して取得した損害賠償請求権は、右給付と「同一の事由」(労働者災害補償保険法一二条の四)については損害の填補がなされたものとして、その給付の価額の限度で減縮するものと解されるところ、右にいう保険給付と損害賠償とが「同一の事由」の関係にあるとは、保険給付の趣旨目的と民事上の損害賠償のそれとが一致すること、すなわち、保険給付の対象となる損害と民事上の損害賠償の対象となる損害とが同性質であり、保険給付と損害賠償とが相互補完性を有する関係にある場合をいうものと解すべきであって、単に同一の事故から生じた損害であることをいうものではないと解される。

そして、民事上の損害賠償の対象となる損害のうち、原告が支払を受けている前記療養補償給付が対象とする損害と同性質であり、前記「同一の事由」の関係を肯定できるのは、財産的損害中の積極損害のうちの治療に関する費用、すなわち治療費及び入院雑費(入院雑費は、治療に関する費用として療養補償給付が対象とする損害と同性質といえる。)のみであって、財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)及び精神的損害(慰謝料)は右療養補償給付が対象とする損害と同性質であるとはいえないと解される。したがって、右給付額が現に認定された対象の損害額を上回っていたからといって、右超過分を消極損害や精神的損害の額から控除することは許されないといわなければならない。

また、同じく民事上の損害賠償の対象となる損害のうち、原告が支払を受けている前記休業補償給付及び障害補償年金が対象とする損害と同性質であり、前記「同一の事由」の関係を肯定できるのは、財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)のみであって、財産的損害のうちの積極損害及び精神的損害(慰謝料)は右各給付が対象とする損害とは同性質であるとはいえないと解される。したがって、右各給付額が現に認定された対象の損害額を上回っていたからといって、右超過分を財産的損害のうちの積極損害や精神的損害の額から控除することは許されない(最高裁昭和五八年(オ)一二八号同六二年七月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻五号一二〇二頁参照)。

(三)  以上に基づいて算定される損害額は、次のとおりである。

(1) 財産的損害のうちの積極損害(治療関係費)

〇円(マイナス六六一万五八四三円)

(治療関係費)-(療養補償給付)=2,861,075円-9,476,918円=-6,615,843円

(2) 財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)

〇円(マイナス四八一万六二三七円)

(逸失利益)-(休業補償給付+障害補償年金)=4,456,892円-(5,652,538円+3,620,591円)=-4,816,237円

(3) 精神的損害(慰謝料) 二八五万〇〇〇〇円

精神的損害について前記各給付金を控除すべきでないことは前述のとおりであるから、前記の慰謝料二八五万円(入・通院慰謝料五七万円、後遺症慰謝料二二八万円)がそのまま損害額として認められることになる。

(4) 損害額小計 二八五万〇〇〇〇円

2  労災特別支給金と損益相殺の可否

抗弁3(損害の填補)の事実は、当事者間に争いがない。

被告は、原告が支給を受けた休業特別支給金及び障害特別支給金を前記損害額から控除すべき旨主張するが、右各支給金を含む労災特別支給金は、労働者災害補償保険法一二条の八に規定する労災保険給付ではなく、同法二三条に規定する労働福祉事業の一環としてなされる被災労働者等に対する援護(休業特別支給金は療養生活援護金、障害特別支給金は治癒後の生活転換援護金)として支給されるものであること、同法一二条の四の規定は政府の損害賠償請求権の取得原因となる給付を保険給付に限り、労働福祉事業の一環として支給される労災特別支給金の給付を除外していること等から考えると、右各支給金は損害の填補を目的とするものではなく、右各支給金を損害額から控除することは許されないものと解するのが相当である。

したがって、被告の右主張は理由がない。

六  消滅時効

1  国家賠償法二条一項に基づく損害賠償請求権は、被害者が、「加害者」及び「損害」を知った時から三年の経過により時効消滅する(同法四条、民法七二四条)。

2  原告が「加害者を知った時」

《証拠省略》によると、原告は、本件事故の直後から本件事故の責任は被告にあると認識していたと認められるから、原告は本件事故の直後に加害者である被告を知ったものと認められる。

3  原告が「損害を知った時」

(一)  原告が本件事故により受けた傷害、その入・通院治療の経過及び後遺症は前記認定のとおりであり、《証拠省略》によると、原告は、本件事故の翌月の昭和五五年一二月二三日症状が軽快したとして退院したが、その後強度の右眼疼痛、霧視、右眼周辺及び頭部の疼痛等が生じて疼痛部の神経破壊術を繰り返し受け、同五七年三月頃には右疼痛は軽減の兆しが見られたものの、その後また右症状が再発し、同六〇年一〇月六日までの間に二回の入院を繰り返して大及び小後頭神経、眼窩神経切除の手術等を受けてきただけでなく、右眼は失明状態まで悪化するに至ったこと、その後も、頭部については、寒冷期において頭皮の灼熱感が軽減されず、時折神経遮断の手術を受けざるをえない状態にあったこと及び原告の後遺症については、主治医により、同六〇年一二月一日症状が固定したものと診断されたことが認められる。

(二)  ところで、被害者が「損害を知った時」とは、損害の内容及び程度が、社会通念上被害者において損害賠償請求権を行使しうる程度に予見可能となった時をいうものと解すべきところ、その予見可能時期は、入・通院慰謝料にあっては、入・通院を止めた時または入・通院治療を継続しても治療効果が期待できない程度に症状が固定した状態に至った時、後遺症慰謝料にあっては、右のようにその症状が固定した状態に至った時、と解するのが相当である。けだし、残存する症状につき治療効果が期待できる状態の下では、被害者がなお治療を継続しようとするのは当然であって、そうする限り被害者の精神的損害の程度も把握できないものというべきであり、そのような段階で被害者に損害賠償請求権の行使を要求するのは酷に過ぎるからである。

しかして、前記認定の原告の症状及びその治療経過にかんがみれば、昭和五七年三月時点では未だ原告の症状は固定状態に至っていなかったものというべきである。そしてまた、原告が本訴を提起した同六二年一〇月一日(記録上明らかである。)の三年前である同五九年一〇月一日以前に原告の右症状が固定状態に至ったことを認めるに足りる証拠もないから、原告の慰謝料請求権についての被告の時効消滅の主張は理由がないというべきである。

七  援用権の喪失

仮に、被告主張のとおり前記慰謝料についての損害賠償請求権の消滅時効が完成しているとしても、被告の右消滅時効の援用は、信義則に反し、許されないものというべきである。

すなわち、《証拠省略》によると、

1  原告は、本件事故直後から、息子の林省司を代理人として、被告と本件事故の損害賠償について継続的に交渉していた。

2  被告は、原告との交渉の当初から本件事故の責任を全面的に否定することはなく、むしろその責任を暗黙裡に認めながら交渉に応じてきた。

3  本訴の提起が本件事故の約七年後になったのは、被告のそのような交渉態度に原告が安心していたことと、原告の治療が長期化し、原告の治療が打ち切られるまで損害額が確定できず、実質的な交渉ができなかったことによるものであった。

4  加うるに、被告は、昭和六一年五月一〇日には、被告の過失割合を二割として本件事故の責任を認め、少なくとも一〇八万九二〇〇円を支払う旨原告に伝えていた。

5  原告は、被告からの右回答に不満であったことから、調停を申立て、その後、同六二年一〇月一日本訴を提起した。

以上の事実が認められる。

右認定の事実によると、原告は、権利の上に眠っていたわけではなく、また、被告は、原告との紛争を話し合いにより解決しようとしていたものであり、原被告間には交渉が継続している限り時効は云々しないとの信頼関係が成立していたといえなくもなく、したがって、原告において訴えを提起することは憚られていたとみるべきであり、加えて被告は、本件事故の責任と賠償義務を一部とはいえ認めていたのであるから、被告が右消滅時効を援用することは、信義則に反し許されないというべきである。

したがって、いずれにしても被告の消滅時効の主張は理由がない。

八  弁護士費用

本件事故の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告が被告に対して賠償を求めうる弁護士費用の額は、三〇万円とするのが相当と認められる。

九  結論

以上によると、原告の本訴請求は、被告に対し三一五万円及びこれに対する本件事故後である昭和六二年一〇月一七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹中省吾 裁判官 佐藤嘉彦 北川清)

〈以下省略〉

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